コラム

【イベントレポート】保育士の働き方を考えてみよう

話題の『働き方改革』。テレビや新聞でよく取り上げられますが、「人が足りない…」といわれている保育現場でも切実な問題になっています。

でもそれって一体どこから、どうやって考えていくもの?誰かが考えてくれたらいいけど、経営者や政策をつくる人たちに任せっきりでいいのかな?

せっかくだし一度、潜在保育士部でも話してみようか…?

 

そんなノリで今回、ワークショップが企画されました。

実際にやってみると、色んな意見が飛び交うアツい2時間となり、参加レポートとして内容の一部を、ほいくしがでも発信することにしました。(Shiga潜在保育士部内の非公開イベントとして行われたため、誰がどんな発言をしたかは伏せています。)

保育の世界でも今、給与の見直しが少しずつ始まっていますが、『働き方改革』となるとこれからの印象。積極的な園の話を聞くこともありますが、やはりどこも現場が忙しくて、議論する余裕すらなかなかないようにも感じます。

今回のワークショップは、そんな現場を離れている潜在保育士さんたちが「まず何が問題なんだっけ?」「何を議論しないといけないんだっけ?」から少しずつ見直していく機会になりました。

(こんな感じで進行したワークショップでした。)

  1. そもそも「働く」ってなんのため?
  2. 今の保育士の働き方って?
  3. 保育士の必要性って?
  4. 保育士の将来像、どうしたら良くなるの?
  5. これからどうするか

1. そもそも「働く」ってなんのため?

この日のワークは、オンラインの参加者を含めて数人ずつのグループに分かれて議論し、その後にシェアする、というかたちで行われました。

保育士の働き方について話す前に、最初に行われたのがこちら。ずばり「私たちはなぜ働くのか?」

なかなか、疑うことのなかった前提です。大人になったら働くものだと思ってたし…。でも実際は働くことに関して苦しんでいる人だってたくさんいる中で、そもそも何で自分は働いたり、あるいは働きたいと思うんでしょう?

「生きるため」「家族を養うため」「自由に使えるお金を稼いで、ゆとりをもつため」と言った意見がまず出て来ます。生活のために働く、という視点です。

続いて出て来たのが、「居場所づくり」「人の役に立てる喜び」「自己実現」といったワード。社会の中で、家族以外にもつながりや貢献できる場所を求める声が相次ぎました。

また「夫婦の収入バランスが負い目になる」といったリアルな声もあり、世代間で働き方もどんどん変化している中で、働く動機も多様化していることが、何となく見えてきます。

ふだん一緒に生計を立てている夫婦や家族だと、「誰がいつ、どのくらい、どう働くか?」は話しても、「なぜ?」ってあまり出てきにくい切り口なんだな、ということも感じました。

2. 今の保育士の働き方って?

ワークシートはそのまま使って、「じゃあ、今の保育士の働き方ってどうなん?」と話が移ります。

このほいくしがは、決して保育現場の批判をするメディアではないのですが、今回のワークで実際に出た意見にはやはり「仕事量の多さ」に触れたものが多く、それなりにシビアな話になりました。

どんな仕事が増えているのか?を掘り下げていくと、「子どもの育ちを支える」という本質的なところ以外で、事務処理だったり外への対応だったりに追われていることが見え隠れします。

また雇用の柔軟性についても話題に。保育士個人の事情もさまざまな中で、短時間勤務を希望するニーズがある一方、雇う側はフルタイムの保育士を中心とした体制になっていて、そのギャップが感じられました。

先ほどの保育以外の仕事については、残業だったり持ち帰りの対応になることも。そうすると今度は、短時間勤務の保育士がそうした業務をしづらいため、いっそう柔軟な雇用にむすびつかないのかも…という意見も。

 

さらに業務にゆとりがないために「他の保育士の様子が分からない」「他の園の様子が分からない」「世代間での考え方の違いを、ゆっくり議論する時間がない」。横で情報をシェアしづらい状況にあることも、話す中で浮き彫りになってきました。

「今の保育士の働き方って?」と言われても、それぞれが自分の経験しか分からない。業務が多いとして、じゃあどこを効率化してどこはしないのか。それを考えるには、もっと多くの視点から事例を集めて、話す時間をつくっていかないといけないようです。

3. 保育士の必要性って?

ブレイクをはさんでの次のワークは、保育士の必要性について。

最近ようやく、保育士の存在意義について見直されることが増えてきた感じもありますが、まだまだ多くの人に「子どもと遊んでいるだけ」と思われているかもしれません。保育士自身は、保育士の必要性をどうとらえているんでしょう?

「専門性をもって保育にあたることができる」。どのチームからも、こうした言葉が最初にでてきます。でも「じゃあその『専門性』ってなに?」となると、意見はさまざま。

「子どもの健康・発育に関する専門知識をもっている」「発達を見通した上でのかかわりができる」などたくさんの意見がでましたが、一方で「保育士自身が、まだ明確にその『専門性』を説明できないのでは…?」という指摘もでました。

「働く親を支援する」「地域と子ども・家族をつなげる」といった切り口や、親とは違うかかわり方をする大人として「社会全体で子どもを育てる仕組みを担っている」という意見も。

子どもを中心として、さまざまな接点をもっていることが少しずつ見えてきます。

実は保育士が働いている現場は保育所だけじゃなく、療育の施設だったり児童擁護施設だったりもあるのですが、そうしたことも実際なかなか知られていない、という指摘もありました。

4. 保育士の将来像、どうしたら良くなるの?

最後に、全体で保育士の将来像についてディスカッションが行われました。

「月給を高く」「負担の軽減」「柔軟な雇用」「制度の見直し」という切実な言葉がでると、それぞれに「どうやって?」の疑問が連なります。当然ですが、直接的な解決方法はすぐには出ません。

ですが「雇用する側・雇用される側がもっとお互いの持っているものを出し合って寄り沿わないと…」「まず保育士自身が、もっと声を上げないといけない」「今の仕事も、そもそも子ども中心になっているかで整理していける」といった前向きな意見も出始めます。

また「保育所に務める=保育士という概念も、フリーランスとか、企業の中で従業員の家族支援を担当するとか、もっと多様化してもいいのかも」といった視点もありました。

これらの意見の多くは、ある方の「もっと社会に認められたい」という言葉に、率直に込められているように感じます。

例えば看護師という仕事も、かつては社会的地位の改善のために自ら立ち上がった歴史があり、処遇の改善や柔軟な雇用が進みました。保育士も同じように、自分たちで発信の場をつくっていく必要があるのだと痛感させられます。

5. これからどうするか

このワークショップは、どこか特定の園の労働環境を直そうとか、そういうことではありません。潜在保育士の一人ひとりが自分の置かれた状況を振り返るなかで、保育士の明日を良くしていくために、小さくできること、みんなで変えていきたいことなどを語りあえたのは、とても良かったと思います。

一方で、保育の世界にもいろんな立場の人がいる中で、それぞれの置かれているスタート地点がぼんやりしてしまっているため、議論がしづらいんだなということが、ワークを通じて感じられました。

これという結論がない中で、今回は参加者の方もそれぞれに課題を抱えて帰られたのかなと思います。

 

ほいくしがとして出来ることは、今後もメディアを通じて、多様な立場の人が、それぞれの立場や気持ちの発信をするお手伝いをしていくことだなというのが一つ。

またもう一つ、「保育士の専門性とは?」「子どもを中心にしたときに何を見直せるか?」といったテーマを掘り下げる場を、今回のように一人ひとりの保育士が言葉にできる環境でつくっていくことも価値があると感じています。

立ち上がったばかりのメディアですが、今後の取り組みも応援していただけるよう、発信を続けたいと改めて感じました。

 

(文:佐々木将史/ほいくしが編集部)